実質値上げの本質(マンガ家nikoの解釈)
プロローグ
(ぴこつ)
なんかこのケーキ、価格改訂前に比べて小さくなってない?
(niko)
うん、そんな気がする。このサンドイッチも前に比べて小さくなってると思う。
(ぴこつ)
だよな
(niko) 実質値下げだね!
(ぴこつ)
“値・上・げ”な。それ、前も言ってたけどさ、自信満々に言わないの。
(niko)
そうだっけ。じゃあさ、こういうのはどうなの?
・・・
値上げは死活問題
(niko)
おじいさんは山へしば刈りにいきました。おばあさんは川へ洗濯に…
(ぴこつ)
おおどうした、唐突に昔話入っちゃってるよこの子
(niko)
おじいさんが竹林の中で目を覚ましました。辺りはもう夕暮れです。
(ぴこつ)
じいさん1日仕事サボって寝てただけじゃねーか!
(niko)
竹を持たずに家に帰るとお婆さんに半殺しにされるので、おじいさんは竹を買いに街へと降りて行きました。
材木屋で竹を五本買おうとしたところ、いつもなら一本1000円なので5000円で買えるのに、今日はなぜか6000円を要求されました。
(ぴこつ)
お、なんかお婆さんの存在が怖いけど、いい感じの例え話になっていきそうな気がしてきたぞ。
ただそもそもおじいさんが竹を町に買いに行くという設定はどこの昔話から…
(niko)
おじいさんは店主の話を聞いた瞬間にブチギレて
「てめぇ!ジジイだからってボケてると勘違いしてんじゃねーぞ!」
と恫喝しました。
(ぴこつ)
おい急にどうしたじいさん、落ち着けよ…
(niko)
店主は「いやダニエル、ちょっと待ってくれよ」となだめに入りました。
(ぴこつ)
まさかのダンディーな名前だな、じいさん。
(niko)
「聞いてくれ。今年はいつもの年より雨が多くてな、竹がなかなか育ってねーんだよ。だから仕入れも少なくてよ。こっちもまいってんだよー…」
と店主は泣き言を言い出しました。
(ぴこつ)
辛らつだな。泣き言じゃなくてさ、悲痛の叫びだよそれ。かわいそうだから許してあげてよ。
(niko)
「しょーがねーなジェイムス」
(ぴこつ)
どこよ、どこの国の昔話なのさ、niko先生。
(niko)
「長い付き合いだ。今日はお前を助けると思ってその値段で買ってやるさ」
(ぴこつ)
イキだね。やっぱこのじいさんダンディーだ。
想定外のトラブル対応も誠実に
(niko)
おじいさんはお金と引き換えに竹を受け取りました。すると、一本の竹の一部がほんのり光っています。
(ぴこつ)
おい、ちょっと待って竹が光ってるってまさか・・・?
(niko)
おじいさんは早速、手持ちのナタで光る継ぎ目をズバッと切り裂きました。
(ぴこつ)
潔すぎだろダニエル!ちょっとは躊躇しろよ!中に入ってるのたぶんアレだよ!?あの子だよ!!??
(niko)
切れた竹の割れ目からはより一層のまばゆい光があふれ出し、直後に光は徐々に収まって中が少しずつ見えてきました。
(ぴこつ)
ついに現れるな…今日一番の見どころだ。
(niko)
ところが、光は収まりましたが、中はまだ何も見えません。不思議に思いながら、おじいさんは切れ目から竹の中に腕を突っ込みました。
(ぴこつ)
いやーそんな無理やり引っ張り出しちゃう感じ?頼むからそっと、そっとだよ!
(niko)
中から引っ張り出されたのは、帯のついた現金でした。
(ぴこつ)
えーーー!?ちょっと待って!そんなの夢無さすぎだって。そんな怪現象ある!?…いや本家もそりゃ怪現象だけどさ、それはいくらなんでも読者にも無慈悲だって!
(niko)
「おいテメェ!!それを返せ!!」それを見た店主は額に血管をむき出しにして叫びました。
(ぴこつ)
落ち着けジェイムス!混乱してんのはオレもいっしょだ!!
(niko)
「そりゃできねぇな!もうオレはお前から6万でこの竹を買ったんだ。その竹から何が出てこようが、それはもうオレのもんだ」
(ぴこつ)
テメェも無慈悲だなダニエル!長い付き合いじゃねーのか!
(niko)
「例えばだな、仮にここから出てきたのがクマのう◯こだったとしたら、お前は同じように“返せ”と言ったか?言わねえだろ。」とおじいさんは諭すように店主に語りかけました。
(ぴこつ)
ちくしょーおじいさん、ド正論だ。こりゃ店主も何も言えねぇわ。
夢は二度見る
(niko)
「ちくしょー!もうこの店では二度と買ってやらねーからな!!潰れちまえこんな店!」
(ぴこつ)
あーせっかくの友達だったのに、光る竹のおかげでぶち壊されちゃったよ。なんだか切ないな。いっそのことクマのう◯こが入ってりゃよかったな。
(niko)
おじいさんは何食わぬ顔でいつも通りに竹を背中に担ぎ、手に入れた現金は懐に入れたまま家へと帰ってきました。
(ぴこつ)
わるい奴だなーじいさん。収穫ごまかした上にへそくりまでちゃっかり作っちゃってるよ。
(niko)
家ではおばあさんが夕飯の準備が終わっておじいさんを待っていました。ふと、おばあさんの膝の上を見ると、すやすやと眠る赤ん坊を抱いていました。
(ぴこつ)
そっちかーーー!!おばあさん川に洗濯に行ってたんだった!いや完全に無防備だった、やられたね
(niko)
「おばあさんどうしたんだその子は!?」「洗濯していたら大きな桃が流れてきてね、その桃を割ったらこの子が出てきたんだよ、おじいさん」
(ぴこつ)
そうそう、その展開よ待ってたのはさ。
(niko)
そう明るく笑ったお婆さんの座布団の下には、赤ん坊が握りしめていた帯付きの現金があったとさ。めでたしめでたし。
(ぴこつ)
なにがどうめでたいのよniko先生。ぼくはすごく後味が悪いよ。
エピローグ
(niko)
・・・っていう時は実質値上げなの?値下げなのどっち?
(ぴこつ)
なにが?一体どのエピソードに対してそれを評価すればよかったわけ?
とにかくそんなわけの分からない昔話なんてどうでもいいけど、ケーキに話を戻すとだな、小さくなって価格も下がってたとしたら、実質もなにも価値は変わってないでしょうが。
(niko)
うーんむずかしいよねー…
(ぴこつ)
いや何もむずかしくないよnikoさん。落ち着いて考えたらわかるでしょ。
でも、オレはかまわないけどね。食べ物に関してボリュームにはあまり関心がないから。出てきたもの食べ切ったらそれで満足だし。
(niko)
ぴこつはそうだよね。
(ぴこつ)
そそ。食欲ってさ、ただの「欲」だから。欲してるのはお腹じゃなくてココ、頭だからさ。目の前のもの食べて、食べ続けずにさ、少し間を開ければ「もういいや」ってなってることに気づくんだよ。
(niko)
そうかもね。
(ぴこつ)
だからさ、たとえケーキが小さくなっても、税込価格になって価格が安くなってればオレは満足だし、そっちの方がいいな。端数も出ないし。
(niko)
うん。いいかもね、実質…値…下げ!
(ぴこつ)
「上げ」な。