マンガの作り方

マンガ家がアシスタントとチームを組む本当の意味

アシスタント

ぴこつです。
マンガ家nikoのパートナーをしています。

nikoはプロのマンガ家としてデビューしてから、駆け出しの早い段階からアシスタントとチームを組んでマンガを描いています。

nikoはなぜアシスタントとチームを組んでマンガを描くのか?

今回はその意味についてお伝えします。

アシスタントとチームを組むメリット

作業速度を上げることができる

マンガ制作では、各作業工程によってやる作業が変わってくることはもちろんのこと、メインキャラ・モブキャラ(ストーリーに直接関わりのないキャラ)・背景など描くもの自体もたくさんあります。

もちろん、それぞれの描く箇所をすべて一人でこなすこともできますが、特にデジタルマンガを執筆している場合にはマンガ制作アプリの共有機能を使って作業を分担することが可能です。

なので、例えば自分は「キャラを描くこと」に集中し、アシスタントには「背景を描くこと」に専念してもらうなど、作業分担をすることによって並行作業が可能になります。

すると当然、作業は並行して進むのでスピードアップに繋がります。

苦手な作業を任せることができる

アシスタントとチームを組んで作業を分担するとした場合、どういった作業を任せられるでしょう?

一番いいのは、その人の得意な分野を任せることだと思います。
なぜなら、得意な分野ほど作業効率のアップが望め、また、やっていただく方にとっても作業に対する苦しみを軽減することができるからです。

もう一つの考え方として、自分の苦手な作業を任せることもアリだと思います。
自分の苦手な作業というのは本当に苦痛に感じることが多いです。「その苦しみを乗り越えてこその作品だ」という方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、苦手な作業に自分の時間を費やすことによりストレスがたまり、しかも苦手なので作業速度も低下することでしょう。

余談ですが、ぼくは本当にストレスは甘く見ないほうがいいと思っていて・・・

「ストレス」という言葉だけだと一時的なメンタルの問題として受け止めてしまう人もいるかもしれませんね。
ですが、このストレスは身体的なリスクとも大きく関わっています。
「国立研究開発法人 国立がん研究センター」のこちらのページでもストレスがガンの進行に大きく関わることを発表しています。

少し話がそれましたが、ストレスをなくすことは不可能ですが、極力減らすことが作家人生を長引かせること・・・もっと言うとその人自身の人生を長引かせることにつながるということです。

ただし、「自分の苦手な作業を任せる」とは言っても、任せられる側の人も同じように苦手な場合はその人のストレスにつながり、本末転倒となってしまうため注意が必要です。

孤独感を緩和することができる

マンガ家に限らず、クリエーターというのは常に孤独だという人が多いです。

マンガ家を始めとするクリーターは自分の価値観を表現するため、基本的には表現者個人の力で創作活動を突き進んでいくことになります。

でも、こう考えてはどうでしょう?


自分が一番みんなに見てもらいたいのは自分の作品のこの部分だ


「マンガのすべてに自分の力を注がないと気が済まない」という完璧主義の方もいると思います。
それはそれで素晴らしい理念だと本気で思います。

ただし・・・

ぼくのパートナーである「niko」はその類いではないことはぼくが一番よく知っています。

nikoは自分が得意な作業、苦手な作業は認めていて、苦手な作業はアシスタントにおまかせしています。

一方で、他人には譲れない部分というのもやはり持っていて、
そこについては誰になんと言われようと頑固にエゴを貫き通すということもぼくは理解しています。


たしかに、自分一人で作り上げた作品であれば、それを成し遂げた達成感を自分だけのものにできる、いわば「独占欲」を満たすことができるかもしれません。

でも、それを快感と思わない場合、制作過程においては一人でひたすら描き続けることで孤独を感じてしまい、作品作りに向き合うことが困難になることもあるでしょう。

その時、一緒に描き続けてくれるアシスタントの存在があれば、その孤独感を緩和することが可能です。自分の絵に対してアドバイスをもらったり、品質や進行状況の客観的な判断も得ることができると思います。

精神的な余裕を持つことができる

マンガ家さんの一番苦しい時期といえば・・・何を隠そう間違いなく〆切の間際です。
〆切間際ではなくても、常に〆切へのプレッシャーは感じていると思います。

パートナーであるnikoも例に漏れず常に「〆切、〆切」と念仏のように唱えます(ウソです)。

でも、あながち大袈裟でもなく、いつも「〆切前」だというセリフは吐いているような気がします。
たとえ、月一回(nikoのペース)で訪れる〆切を乗り越えたとしても、次の週には「〆切前で」という言葉が出ている記憶があります。


と、ここまでに「〆切」という言葉を合計9回も登場させてしまいました。この言葉に敏感に反応するマンガ家さんに不快な思いをさせてしまったことを深くお詫びいたします。
m(_ _ )m”

それはともかく、常にそういったプレッシャーを抱えるマンガ家さんは多いと思います。
それもやはりアシスタントとチームを組まずに一人で戦っている方はそのプレッシャーを一人で受け止め続けなければなりません。

またその時々で自分の気分や体調によってプレッシャーを受ける度合いも違い、大きなダメージを受けて手が止まってしまうといったこともあるかと思います。

そんな時、信頼のおけるアシスタントさんの存在があったらどうでしょうか?

「同じ目標に向かって走ってくれる存在がある」というだけでも心強いと思います。

言い方は悪いですが、道連れ(悪すぎ)というか運命共同体というような人がいれば、そのプレッシャーも半分・・・とまではいかないまでも、軽減されるでしょう。

アシスタントとチームを組むデメリット

作業を割り振るという手間がかかる

「アシスタントとチームを組む」と言っても、思いつきの一朝一夕で成立するわけでもなく・・・

アシスタントの人選手がけている案件の説明自身のスタンスや考え方作業の割り振り

など、気にする方にとっては細かいことをあげればキリがないほどに伝えることが多くなってしまうということも考えられます。

作業を任せるマンガ家の裁量だったり、アシスタントさんに対する信頼度によっても伝える内容は変わってくるかもしれません。

いずれにせよ、自分がどのような作品を作りたくて、どういう雰囲気で描いてほしいかなど、作品のコンセプトに加えて、当たり前ですがアシスタントさんに任せる作業内容は伝える必要があります。

そういった説明に費やす時間が手間だということはできます。

自身の受け取る報酬が減少する

マンガ家はマンガを執筆する際、出版社と事前に契約した原稿料をいただいています。
実際に受け取るのは原稿が出来上がって納品(脱稿)したあとになりますが、一般的にはマンガの執筆作業前にマンガ家と出版社の間で決めることになるでしょう。

その際、出版社はお願いするマンガの原稿に対してのみ報酬を提示します。マンガ家がアシスタントとチームを組んでいるからと言って、その方の報酬も上乗せするということはあまりありません。
※契約時に交渉の余地はあるかもしれませんが。

ということは、自分一人で描いていた場合は当然、原稿料は自分だけのものとなりますが、アシスタントとチームを組んでいた場合には、その原稿料からアシスタントさんに報酬をお支払いする必要があります。

特に、プロとしてまだ売れる見込みの立っていない作品を執筆しているマンガ家にとっては、アシスタントさんに生活費の一部とも言える原稿料をお支払いすることに対して抵抗があることも十分に理解できます。

ぼくも、マンガ家を含めたクリエーターにとって、稼ぎながら創作するというのは極めて健全な活動であると思うし、どんな世界のプロであっても活動するためにはお金が必要だと考えます。

理想のクオリティとスピードに差がある可能性がある

アシスタントとチームを組むと言っても、アシスタントさんもみんな同じクオリティのロボットというわけではなく、人間です。

アシスタントさんそれぞれの個性があり、クオリティや作業スピードもバラバラだと思います。
チームを組む」となった時、アシスタントさんに何を求めるかはマンガ家によって違ってくるでしょう。

  • 作業スピードよりもクオリティを重視してほしい
  • クオリティよりも作業スピードを重視してほしい
  • 同じ感性を持つ人に作業を任せたい

など、千差満別の要求があるかと思います。
それに、マンガ家がアシスタントに求めることがあったとしても、実際にアシスタントとチームを組んでみると思っていたような仕事がしてもらえないという可能性もあります。

「良い」とか「悪い」とかっていう話ではなく、マンガ家とアシスタントの理想とするモノへの考え方の差があるということですね。
ですので、その辺りも作業をする中でコミュニケーションを取ったり、お互いの進捗度合いを確認したりして、考え方のすり合わせというのが必要になります。

相性が良くないと精神的に不安定になる可能性がある

ぼく個人の考え方ですが、「すべての悩みは人間関係にある」と思っています。
どんな悩みであっても、冷静に元をたどっていくと、行き着くのは人間関係です。

なので、これは非常に重要なことだと思います。

チームであっても、やはり人間関係なので、相性の問題というのは出てきます。
これは「どういう人ならいい」とかいうことではなくシンプルに「自分との相性」の問題ですね。

性格上で合う or 合わない というのはどうしてもあるだろうし、合わないとしても、もしかしたらお仕事の範囲で許容できるところはあるかもしれません。

ですが、チームを組んでやっていく以上、お互いに合わないことを我慢してストレスを溜め込んでしまっては、「目的を共有する」という、せっかくのチームのメリットが薄れてしまいます。

また、そういう時は間違いなく作品自体のクオリティや完成までの作業スケジュールに大きく影響してきます。

そういう時には、お仕事なのでしっかりとした信念のもと、チームを解消するという選択も必要です。

アシスタントとチームを組む本当の意味

さて、ここまでアシスタントとチームを組む際のメリット/デメリットを示してきましたが、nikoがアシスタントさんとチームを組んでいる本当の意味をパートナーであるぼくの解釈で書いてみます。


「早く行きたければ、ひとりで行け。遠くまで行きたければ、みんなで行け。」


アフリカの有名なことわざだそうです。

目的地に早くたどり着きたい時は一人で目指し、
より遠い目的地にたどり着きたければ助け合ってみんなで目指せ。

ということですね。

確かに、マンガを描き始めたばかりでマンガを完成させるまでのノウハウなども乏しい場合、アシスタントとチームを組んだところで説明やアドバイスにばかり時間的なコストがかかってしまい、目指すべきゴール(脱稿)に到達するのは遅くなってしまうかもしれません。

であれば、一人で突っ走って作り切ってしまった方が結果的に早く出来上がるということはあるでしょう。
そしてその後、マンガを作りあげる作業を繰り返すことで自身の作業効率もアップし、一人で何作も作りあげるということが可能になるかもしれません。

では反対に、アシスタントとチームを組んだ場合はどうでしょうか?

まず、誰かに作業を振る場合には最低限、自分の理念作業内容を伝える必要があると思います。「理念」というと大げさに聞こえるかもしれませんが、「どんな感じの作品を作りたいか?」っていう自分の思いですね。

その作業に対して無駄だと感じてしまうこともあるかもしれません。

でも、そういう理念や思想を共有できる人が見つかった場合、その人とは強力なチームとなるでしょう。
すごーく単純な見方をすると自分が二人いるかのような感覚です。

そうなった時、自分の報酬が減ったとしても、それは自分がやるべき作業をアシスタントさんが代わりにやってくれているので喜んでお支払いするだろうし、自分の作業的にも精神的にも支えとなってくれることにマンガ家としては感謝しっぱなしだと思います。

そして一度、そんな信頼のおけるアシスタントと強力なチームが組めたなら、その後の作品でもお互いのやるべきことや作品のコンセプトを理解できているため、マンガ家が生み出す作品のクオリティや作業効率もどんどんアップしていきます。

マンガ家一人でも、あらゆることがレベルアップしていけば理想の作品を生み出すことは可能だと思います。
でも、チームとしてレベルアップしていけば、マンガ家一人の力だけではできなかった作品を生み出せる可能性も出てきます。

nikoが目指しているのはそういうところであり(たぶんね)、アシスタントのみならずいろいろな人との関わりを通じることによって自分の感性を磨くということもしている(はず)なので、ぼくはチームで課題に向き合っていくnikoの活動には賛同しています。

まとめ

最後は完全にniko個人の活動に対する批評みたいになってしまいましたが、アシスタントとチームを組むかどうかはマンガ家さんの考えによります。

ぼくはnikoの性格にはアシスタントとチームを組んで作品を作っていくスタイルが合っていると思うし、そばで見ていると、nikoが苦しい時であっても「一緒に走ってくれているんだな」ということを常々感じます。

もしも、これを見てくださっているマンガ家さんで、作品作りに行き詰まっていたり長く一人きりで作っていて心身ともに疲れ切ってしまっている方は、アシスタントとチームを組むことによって新たな境地が見えてくるかもしれません。

ぜひ、アシスタントと制作していく道も検討してみてください!