マンガ家と編集者のやりとりは温度調節
ぴこつです。
今日は、マンガ家である妻や他のマンガ家さんを第三者であるぼくがすぐそばで見ていて感じたことをお話しします。
マンガ家と編集者の切っても切れない関係
マンガ家と編集者というのは、たびたび衝突します。
まず最初にお伝えしなきゃいけないことは、編集者に付いたマンガ家ができることは少ないです。
なぜなら、マンガを世の中に出すのは出版社だから。
あ、でも誤解しないでくださいね。
それは悪いことではありません。構造上、そういう仕組みだということです。
世の中にマンガを売り出すのが出版社の場合、その売り出されるマンガ(製品)を描く(作る)マンガ家は製造者。
つまり外注さんなわけです。
少しビジネス的な言い方をすればマンガ家がやっていることはOEM。
スーパーなんかで「プレイベートブランド」と呼ばれる、自社ブランド製品を外で作ってもらうアレですね。
描いているのはマンガ家だけれども、そこで描かれたマンガは出版社のもの。
だから、基本的には出版社の意向は作り手であるマンガ家は全て受け入れなきゃいけない。
だけれども、マンガ家はクリエイターであり、自分が描いているので描きたい物やこだわりが必ず出てくる。そこに編集者との意識の違いが生まれるのでしょう。
編集者とマンガ家の最終目的は同じです。
「良い作品を作る」
スーパーのプライベート商品ならば作る物が決まっているので、製品開発の調整は最初にやったら基本的にはそれでおしまいです。
製造者は販売元(スーパー)に言われた通りのものを作り続ければいい。
でも、マンガとなるとそうはいきません。
なぜなら、作る物自体が最初から決まっていないから。
なので、マンガ家と編集者は作る過程において都度、調整が必要になってきます。これは必然です。
また、マンガは作っていく過程でもどんどんコンセプトが変わっていってしまう可能性があります。
・マンガのジャンル
・出版社の方針
・編集者の趣味、思考
・マンガ家の趣味、思考
これらの要素が絡み合ってマンガというものが作り上げられていると思っていて、その絡み合った要素を放っておいたままではなんだかよくわからない、とっ散らかった作品になってしまうんです。
マンガ家と編集者のやりとりとしては、まずはマンガ家が編集者の意見を聞くことから始まります。マンガ家が出してきたネームに対して担当の編集者から気になる部分や訂正箇所を指摘します。
これは当然の話なんですが、念のために断言しておくと
そこには編集者がマンガ家に対する悪意などは1ミリもありません。
あるのは純粋に「良い作品を作りたい」という思いだけです。
編集者は数々のマンガ家の作品を見てきています。
彼らが指摘するのには必ず理由があります。
たとえ担当の編集者が新人であったとしても、編集者が何かを指摘してくる場合には背後にある出版社の意向が含まれているでしょう。
マンガ家は出版のド素人
これはマンガに限った話ではないのですが、お笑い芸人の漫才であったり、イベントの構成であったりっていうのには、素人ではあまり気にしていないような定石(決まった形)があるわけです。
つまり
「これを押さえとけばまず間違いない」
というような売れるため(ウケるため)の要素が必ず存在します。
マンガ家がその定石を外した状態でネームを持ってきたりすると、残念ながらその時点でもう良い作品ではないことが確定してしまうんです。
経験の少ないマンガ家はその定石を意識して書くことは無いでしょう。それが悪いことではなく、そういうことを指摘するために編集者が存在しているという話。
これを踏まえた上で、両者の最終目的が「良い作品を作る」であることを思い出してみましょう。
実は、両者の最終目的が同じに見えたこの言葉。
中を見ると実は少し違っていました。
編集者の考えている良い作品の条件は「売れる作品」です。
マンガ家の考えている良い作品の条件は「おもしろい作品」です。
これをぼくが(見るだけ)好きなサッカーに例えるのであれば、
勝てるサッカー と 美しいサッカー
非常にわかりにくい例えしか思いつかなかった、すいません!!
実際にはここまで断言はできないかもしれませんが、両者の考えている比率の問題です。
互いに 8:2の割合でこの条件を見ていると考えます。
ここが両者の温度差ですね。
マンガ家と編集が衝突する本当の理由
マンガ家はクリエイターで、創造者。
なので、創造者は常に自分のエゴを作品にぶつけたくなる。
でもそれはいいことでもあるんです。
そうでなければ作品に命は宿らない!
ただ、編集者が考える良い作品の条件である「売れる作品」というのは、創造者が考えている以上に極めて論理的なものであり、そこには売れる理由が存在します。
マンガのネームで言うと
・制作するマンガの規模にあったストーリーか?
・ストーリーの展開に説得力のある裏付けがあるか?
・テーマから外れたストーリーになっていないか?
・読者を飽きさせない抑揚があるか?
・連載ならば『引き』がしっかりしているか?
など、押さえるべきポイントが明確に決まっているんです。
それらを出版のプロである編集者は、少なくとも出版の素人であるマンガ家よりは確実にわかっています。
エゴを貫きたいマンガ家
と
売れるロジックに乗せたい編集者
主張のはっきりしている者同士であれば、衝突の度合いも強くなります。
ただその衝突は両者の「良い作品を作りたい」という熱い思いの裏返し。
マンガ家の個性を最大限に生かしながら、編集者の考える販売ロジックに乗った作品を生み出すことができれば、それは必ず良い作品となっているはずです。
ぼくは、マンガ家と編集者のやりとりを経て、少しでもたくさんの良い作品が世の中に生まれて来ることを願っています。
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