マンガ家の生態

【連載】商業マンガ家の育て方 〜ぴこつとnikoのぎこちない夫婦関係〜2

pikotsu

ぴこつです。

連載の2回目です。前回はこちら

前回はぼくの妻(niko)が同人作家から商業マンガ家になるまでに至った経緯をざっと説明しました。

今回からは、nikoが商業マンガ家になるまでの同人作家時代にどのようなことを考えていたのか。また、一方では夫のぼくが客観的に見て、nikoにどのようなことを考えるべきかと伝えた内容を紹介していきます。

それが、ぼくの考える「商業マンガ家の育て方」の土台です。

今回もぜひ最後までお付き合いください。

経験者の言葉に耳を傾けない

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ここでの「経験者」とは、具体的にはネット上の人間を指しています。

今の時代、ネット上にはどんな情報でも転がっていますよね?
独学で何か新しいことを始めたとしても、欲すればいくらでも情報が手に入ります。

でも、それらの情報はまさに千差万別、「正しいこと」「間違っていること」は自分で判断する必要があるんです。

言い換えるなら、

「信じられること」

「信じてはいけないこと」

当たり前の話なんだけど、これが案外難しい。

ネットの情報ではあたかも本当の事のように理路整然と書かれている事もたくさんある。
自信満々な文章で書かれている内容は、どうしても信じたくなる。

マンガと同じようにブログでも、回数を書いている人ほど文章がうまく、信頼性・・・というか影響力が大きくなります。
検索ワードを入力して引っかかってくる情報で、上位に表示されるのはみんなが見ている情報

たとえば、オリジナル作品をイベントに出品する際にどのくらい売れるのかが気になって、実際に出品した経験のある人のブログを見てみました。検索上位に表示されていた人のブログです。

そこには、現実は厳しいな・・・と感じるような実体験と数字が記述されています。それを見て「自分もきっとこうなるだろう」と思った人が取る行動はどうなるでしょうか?

もちろん、この経験者は実体験を語っているから、それ自体は事実なんだけど、必ずしも読んでいる自分に当てはまるかどうかはわかりません。だけど、経験者であるだけに説得力があり、信じるに値する内容です。

そして、それを見て自信をなくし、その時点で挑戦を諦める人も数多く存在すると思います。また、まちがえてはいけないのが、この経験者は「経験者」であることには違いないけれど、「成功者」ではないということ。
どの分野においても大成功している人というのは、ごくわずか。1%かそれ以下です。

当然、ネット上にあらわれる人物も大半はこの大成功者ではなく「失敗者」。その人たちの言葉を信じて同じように行動したとしても、やはり同じように失敗する可能性が高い。

そもそもがウソの情報ということもあるでしょう。

なんにしろ、技術的な部分はいいにしても、信じていい経験者の体験談というのは少ないと感じます。

特に「マンガ家」のようなクリエイターの情報という意味においては。

だから、niko自身もそういうネガティブな記事を鵜呑みにする必要はないとわかっていたけど、僕も

「ある種のエンターテイメントとして見るだけに止めるべき」

だと言っていました。

失敗体験をくつがえす方法を考える

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ぼくがブログを書くようになってから気づいたことがあります。ブログの世界においては収集できる情報はポジティブなものが多いんです。

「毎月10万円稼げます」

「今月は100万円達成しました!」

「ブログ始めて3ヶ月で月間PV1万達成した」

など、ブログノウハウを収集しようとすると検索上位に表示されるのは『成功体験』が多い。
それもそのはず、ブログはそのブログを見てもらって収益を得るので、 みんなが見たがる成功体験が上位に来るに決まっているんです。

しかし、同人作家が例えば「同人イベントでオリジナル作品を持って行った結果」などのような記事を検索すると、不思議なことに『失敗体験』ばかりが上位に来るんです。

でもこれ、ちょっと考えたら不思議でもなんでもない事なんですよね。

ブログの成功者はその成功体験をブログに載せることにより、またその記事が読まれるから喜んで記事にします。逆に失敗者はその失敗体験を積極的に記事にしようということはありません。

一方、同人作家がイベントに参加して“バカ売れ”したとしても、その体験をブログにしようという人はあまりいません。いや、いるのかもしれないけれど、それ以上に失敗者が記事にしているんです。

そして、その失敗体験を見たがる人が多い。

なぜか。

同人作家がイベントに出るというのは、ブロガーがブログを始めることに比べても、かなりハードルが高いんです。

まず、本を作るのにもかなりのコストがかかります。地方に住んでいれば、大きなイベントに出ようとすると都市部になるため、交通費もかかる。

そこに、

『自分がそんなにお金をかけて本を作っても、ほんとうに売れるんだろうか?』

という不安が襲ってきます。そこで大半の人は、無意識に逃げる理由を探し始めるんです。

「イベントに出てもやっぱり売れないんだ」

「誰も自分のオリジナル作品には興味なんてない」

「他にもたくさん作家がいるのに自分のところにお客さんが来るはずない」

こういう理由を、自分の中で正当化したいんです。

「自分だけじゃない。みんなそうだから自分がイベントに参加しないのはしょうがないことなんだ」

って、納得させたいんです。

だからそのような失敗体験が検索結果の上位に来てるんだと思います。

nikoも当然、それを目にしています。

でもそこは冷静に受け止め、ぼくと二人で

「だったら、その失敗体験をくつがえしてやろう」

と考えていきました。

・他の作品とのストーリー展開の差別化
・絵やキャラクターのオリジナリティ
・イベント出店時のポスターの目立たせ方、ディスプレイ方法

その結果、イベント参加前に見た『失敗体験』で出ていた販売冊数を超え、自分たちが予想していた販売冊数も超え、その失敗体験をくつがえすことができました。

『成功体験』と呼べるほどの販売冊数ではありませんが、そこには二人とも「勝った」という達成感がありました。

(つづく)

ちなみに・・・

ぴこつってだれ?

ぼくよりも妻の方に興味持っちゃった人へ

こんなぼくの妻のマンガ、読んで見ませんか?

   

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